【逃げ場のない炎】赤坂サウナ火災が暴いた“防火管理という名の幻想”

――これは不運な事故ではない。 ――これは「想定しなかった者たち」が生んだ、静かな人災だ。
2025年12月、東京・赤坂。 都会のど真ん中にある“癒しの空間”で、2人の命が奪われた。 個室サウナ。密閉空間。高温。可燃物。
最も「火」を警戒すべき場所で、最も基本的な備えが欠けていた。
私は防火管理者として、この火災を「他人事」として見ることができない。 なぜなら―― この構図は、全国どこにでも存在しているからだ。

■ 密室×高温×可燃物――危険が揃いすぎた空間
サウナ室は、そもそも火災リスクの塊だ。
- 高温環境
- 木材(ベンチ・壁・内装)
- タオルなどの可燃物
- 電気ストーブという熱源
- そして“密閉”
これだけ条件が揃えば、 **「火が出ない方が不思議」**とすら言える。
それでも多くの施設は、
「今まで何もなかったから」 「サウナはそういうものだから」
――その思考停止の上に、営業を続けている。
赤坂のサウナも、例外ではなかった。
■ 防火管理者が“最も恐れる瞬間”が、現実になった
報道によれば、 サウナ室のドアノブが外れ、脱出できなかった可能性が指摘されている。
ここで、防火管理者として叫びたい。
「逃げられない空間は、それだけで殺人装置だ」
火は、炎だけで人を殺さない。 煙・有毒ガス・酸欠・高温―― 数分で人の意識を奪う。
避難できない。 扉が開かない。 助けを呼べない。
その時点で、 防火管理は完全に破綻している。
■ 「設備がある」=「安全」ではない
火災報知設備は作動した。 だが、それで何が救えただろうか。
- 個室内に利用者は1〜2人
- 外部の人間が異変に気づくまでに時間がかかる
- 高温環境では判断力が著しく低下する
防火管理者が考えるべきなのは、 「鳴るかどうか」ではない。
「その人は、自力で逃げられるのか?」
この一点だ。
■ 防火管理は“書類仕事”ではない
防火管理者選任届。 消防計画。 点検記録。
――それらが揃っていても、 人は死ぬ。
なぜなら多くの現場で、 防火管理が**「机の上で完結している」**からだ。
- 実際にその部屋で火が出たらどうなるか
- 意識を失った状態で逃げられる構造か
- 利用者は非常時の行動を理解しているか
それを“現場で”考えたか?
赤坂のサウナ火災は、 この問いに明確な答えを突きつけている。
■ 防火管理者として、私はこう断言する
この火災は、 「珍しい事故」ではない。
むしろ―― いつ、どこで起きてもおかしくなかった火災だ。
個室サウナ、個室エステ、個室岩盤浴、カプセル、簡易宿泊所。
密閉 可燃 高温 無人時間帯
この条件が揃う場所は、 すべて“予備軍”だ。
■ 最後に――防火管理者へ
あなたの建物には、 「逃げられない部屋」はないか。
そのドアは、 煙の中でも、熱の中でも、確実に開くと言い切れるか。
「想定外だった」 「まさか起きるとは」
――その言葉は、 亡くなった人には一切届かない。
防火管理とは、 命を想像する仕事だ。
赤坂で失われた2人の命は、 今この瞬間も、 私たちに問い続けている。
あなたの管理する建物は、本当に“逃げられる”のか?
目を背けるな。 炎は、必ず弱いところから牙を剥く。
あなたの会社に防火管理者がいないなら、今すぐプロに助けを求めてください。
取り返しがつかなくなる前に。
👉 防火管理の駆け込み寺:info@bosai-vita.jp
サウナは「火を使わない」のに火災が起きる
サウナ火災の多くは直火ではなく“輻射熱・過熱”が原因。
▶ 電気ストーブでも周囲の木材・タオルは自然発火温度に近づく。