2025年11月27日・香港火災 ― “最悪の人災”はこうして起きた ―

🔥 事件の基本情報 ― 何が起きたか
• 火災は2025年11月26日午後、おそらく外壁改修中の高層住宅群「Wang Fuk Court」で発生。集合住宅は8棟構成で、火災当時は改修中で、建物外側が竹の足場と緑色のメッシュ網などで覆われていた。
• 通報後、数時間内に火勢は拡大。風にあおられたことで、火は足場やメッシュを通じて一気に延焼し、最終的に8棟中7棟に被害が及んだ。
• 住宅複合体には約2000戸があり、住民は約5000人とされていた。
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📊 被害の規模 ― 死者・行方不明・避難者
• 公式発表によれば、犠牲者数は少なくとも128人(ある報道では146人とも)に上り、これは過去70年で香港最大の住宅火災死者数に相当する。
• 負傷者も多数報告されており、消防士を含むけが人や煙吸引などの被害者が出ている。
• 多数の住民が行方不明/安否不明となり、犠牲者の身元確認や捜索が進められている。
• 約900人あまりが避難所に移された。当局は一時的な避難所や支援を手配。
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🔎 火災原因と延焼メカニズム ― なぜここまで広がったのか
消防・捜査関係者は以下のような要因を指摘している。
• 建物の外壁を覆っていた竹製足場 + メッシュ/プラスチック/防水シートといった“改修資材”が、火災に対して明らかに不適当だった可能性が高い。特に可燃性のメッシュやシート、窓の保護材として使われた**発泡樹脂(フォーム材)**などが火の拡大を加速させた。
• 火災は足場の下部で始まり、網 → 足場 → 建物外壁 → 建物内部、という順で“火の道”を伝い、強風があおったことで、火と煙、燃えかすが高層階・他棟へと広がった。
• 住民からは以前から「改修中のメッシュが燃えやすい」「安全性に懸念がある」という苦情や通報があった。しかし、当局は2024年に火災リスクを「比較的低い」と評価し、安全性の再確認を行っていたものの、今回の惨事ではその評価が裏目に出た。
• 消防・救助も困難を極めた。燃え広がる足場の崩落、濃煙、高熱、落下する灰や破片。構造の複雑さと改修中の不安定さが、救助・避難を著しく妨げた。
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👮♂️ 捜査と責任追及 ― “安全無視”の末の大惨事
• 火災発生後、地元警察は改修を請け負っていた Prestige Construction 社および関連者を、過失致死容疑で 逮捕。3人が対象と報じられている。
• 捜査当局および建築/労働当局は、再発防止のために、改修中の建築物における足場や資材の安全基準の見直し、既存改修プロジェクトの抜き打ち安全点検を予告。
• また、今回の火災は、可燃足場・資材の危険性を改めて浮き彫りにしたことで、今後の建築・改修における安全規制の厳格化が求められている。
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⚠️ なぜ“過去最大級の住宅火災”に ― 背後にあった「見逃された警告」
この火災がここまで大きな惨事になったのは、単なる偶発事故ではない。以下のような複数の“見逃されていた”要素があった。
• 住民が既に「メッシュが燃えやすい」「火災の恐れあり」と通報していたが、安全対策や資材の見直しが行われなかった。
• 改修目的の工事であっても、“防火”は後回し。工期短縮やコスト優先、安全性軽視の体制。
• 竹足場とメッシュという伝統的かつコスト効率の良い方法が、過密高層住宅+密集住宅地という現代都市の条件で、致命的なリスクを孕んでいた。
• 火災時の避難・消火設備、警報・通報体制、管理体制の不備。また、改修中という“工事状態”であることがむしろリスクを高めていたにも関わらず、住民の安全確保が十分ではなかった。
つまり、この火災は「改修という日常の行為」「伝統的/安価な工事手法」「安全基準/管理の甘さ」「住民の警告の無視」が、すべて重なった“典型的な人災”である。
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🧯 防火管理の観点から――なぜこれは「教科書的失敗」か
防火管理者としての見立てでは、この火災は「防火管理上の基本原則」が根底から破られた例だ。
• 可燃素材の使用:外装ネット、メッシュ、防水シート、フォーム材など、すべて火に弱い材料。高層かつ多数住戸がある住宅で使うべきではなかった。
• リスク評価の誤り/軽視:住民からの警告があったにも関わらず、危険性を「低い」と判断。安全点検や第三者評価を怠った。
• 避難・消火計画の不備:改修中という特別な状態にもかかわらず、改修工事の安全マネジメントと防火管理の両立がなされていなかった。
• 責任体制の曖昧さ/管理の甘さ:施工会社、管理者、行政――いずれも防火・安全への意識が低く、安全管理責任が曖昧だった可能性。
このような条件が重なったことで、「少しの火」が「都市規模の大惨事」になった――まさに、防火管理における教科書的最悪のケーススタディである。
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🕯 まとめ ― これは“過去の事故”ではなく、“未来への警鐘”
Wang Fuk Courtの火災は、香港だけの問題ではない。どこにでもある「改修工事」「足場とメッシュ」「高層住宅」「住民・管理会社・行政からの安全意識の甘さ」が重なれば、同じ悲劇が起きうる。
この事件は、
• 建築・改修に携わる者、
• 防火管理を担う者、
• 住民として安全を求める者、
• そして行政や社会――
すべてに対する問いかけであり、
同時に「安全」や「命」のために何を守るべきかを、痛切に示す**“生きた教訓”**である。
もし防火管理者のなり手がいない、防火管理者を専門家に任せたいという方は下記の問い合わせまでご連絡をお願いいたします。
防火管理担当:info@bosai-vita.jp
工事現場は“可燃物だらけ”
木材・断熱材・養生シート・段ボールなど、燃えやすい物が常に山積み。
普段の建物より火の回りが速い!